トンネル 黒部掘削記】

木本正次さん原作、『黒部の太陽』や黒部立山アルペンルートでお馴染みの黒部トンネルです。
1968年に公開された映画を観て深く感銘したことは先にも書きましたが、実際に行ったのは3度だけです。
お時間のある方はこちらもご覧下さい。→ 
黒部トンネルの思い出
時間が出来たらまた訪れてみようと思っています。

さて、今回の地山ですが、左図の様に破砕帯を仕込んであります。
地山製作の様子は地山製作(成功偏)をご覧ください。

固い地山を掘って行くとボロボロの砂の層に突き当たります。
小さな模型ですから、仮に砂を全部掻き出してしまったとしても問題ないですが、隧道内に広い空間ができて、覗き込んだ時かなりみっともない画になりそうです。
また、強度も低下し、運が悪ければ割れてしまうかも知れません。
ここはやはり、砂の流出を極力抑えての貫通を目指すことにします。

@

 型紙を使って坑口をトレースします。
 床(路)面までの高さは17.5mmにしました。 
 
 全長≒200.0mm
 平均勾配≒0.0%
 直線隧道です。
A

 反対側もトレースします。
 識別のため、2つの坑口をそれぞれ扇沢口、黒部口と呼ぶことにします。
B <1日目/延時間0.0時間> >扇沢口 ←カメラ目線

 掘削開始です。
C <1日目/延時間0.5時間> >扇沢口

 当面は扇沢側から堀り進めます。

 陶芸用粘土の粗目を使っている為、細目を使った釜トンに比べると脆く、ノミをこじる様にするとかなり広範囲に割れ、大きなズリが起きます。
 掘り易い反面、力を入れ過ぎると地山そのものが壊れてしまう恐れがあります。 
D <2日目/延時間3.0時間> >扇沢口

 吸水する粘土と吸水のない砂との乾燥収縮差で、無数のマイクロクラックが生じ、それが 地山の脆さの原因にもなっていると思いますが、逆に、このマイクロクラックが乾燥収縮時の圧縮応力を吸収し、大規模な割れを防いでいるものと考えられます。
 
E <3日目/延時間6.5時間> >扇沢口

 約25.0mm掘進しました
 天側を5mm掘削したら、残り下半分を広げ、一旦端面を揃え、次にまた天側を掘削する作業の繰り返しです。
 破砕帯に対処する為、この様な掘り方にしたのですが、後にこの掘削方法は日本式と呼ばれる事を知りました。
 
F <4日目/延時間9.5時間> >扇沢口

 時々、粗目の砂に当たります。
 強引な除去は地山割れの恐れがある為、砂の周りの粘土を慎重に取り除いてから・・・
G >扇沢口

 砂を外しました。
 凹痕が残ります。 

H <5日目/延時間16.5時間> >扇沢口


 先進導抗45mm、本抗切羽40mm掘進しました。

I <6日目/延時間18.0時間> >扇沢口

 先進導抗65mm、本抗60mm掘進しました。
 削る時の音の感じが微妙に変わってきましたので・・・
 
J >扇沢口

 ここで一旦、抗内のアタリを修正しておくことにします。
 サグリ板(厚さ5mmの型板をボルトの先に取り付けた物)を入れてアタリを診ます。
K >扇沢口

 引っ掛かり部分を削り、サグリ板がスムースの出し入れ出来るようになれば修正完了です。
 ここから本坑と先進の端面を合わせ、慎重に掘削します。

 
L <7日目/延時間19.0時間> >扇沢口

 天端付近を穿っていたノミの手応えが急に軽くなったと同時に砂がポロポロとこぼれてきました。

 坑口から70mm、破砕帯に当たりました。 
M >扇沢口

 砂の流出を喰い止める為、用意しておいたステンレス板(長さ70.0mm、厚さ0.1mm)を挿入します。

 破砕帯の突破は地山を作っている時から、
あれやこれや と考えていましたが、今回はこの方法を用いることにしました。

 
N >扇沢口

 ステンレス板を押し込んでから周縁を穿って壁を落とすと砂の壁が現れてきました。
 幸い砂圧が低く、また砂粒子の摩擦が高かったので、勢いよく流れ出す様なことにはなりませんでした。


  O >扇沢口

 残念ながら、貫通石ではありません。
P >扇沢口

 ズリズリとステン板を押し込んでは砂を搔き出す作業を数回繰り返すと、あっという間に全長60.0mmの破砕帯を突破、黒部口側の固い地山にぶち当たりました。 

 これで、扇沢側からの掘削は完了です。
 抗内にボロ布と粘土を詰め込み、隙間からの砂の流出を阻止しておきます。
  Q <8日目/延時間20.5時間> >黒部口

 黒部口の開削開始です。
  R <9日目/延時間25.0時間> >黒部口

 4.5時間で坑口から35.0mm掘進しました。
 残り35.0mmです。
S <10日目/延時間27.0時間> >黒部口

 黒部口からの掘進長が65.0mmを超えた辺りから、穿つ時の音が空ろな響きに変わりました。
 切羽先端まで67.0mmになったところで、ドリルを入れて先端部分貫通です。 
  21 >黒部口

 φ10.0mm抜いたところです。 
22 >黒部口 

 実際の工事で、どの様な抜き方をするのか知りませんが、ここは遊びですので・・・
23 >扇沢口

 扇沢側からの様子です。
  24 <11日目/延時間27.5時間> >黒部口

 トンネル堀り遊びで最も楽しい一時です。
25 >黒部口

 誤差は殆ど有りませんでした。
  26 >黒部口

 扇沢側からのステン板を引き込んで完了です。
 砂の流出が予想外に多かった為、ステン板を渡した直後はトンネル方向中央部で地山方向への膨らみがありましたので、隙間から泥を注入し、地圧を上げて修正してあります。




 掘削はこれで終わりです。 

 巻き立てとか抗門製作は考えていませんが、地山とステン板の隙間が気になっています。
 乾燥した粘土地山に含水のある粘土を塗りこんでも、乾くと剥離してしまうので、最適な充填材を探しています。
 樹脂は極力使いたくありません。
 無機系で何とかしたいと思っています。

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