【隧道  釜トン掘削記】

北アルプス、上高地から流れる梓川沿いの道路にあった旧釜トンネル(釜上洞門)は「釜トン」の名で親しまれ?(苦しまれ?)ていました。
坑道内は一部素掘り、未舗装の狭路、勾配とカーブがきつく、交互通行で運用されていました。
冬季は自動車通行止めでしたので、登山者はピッケルにアイゼンでアイスバーンとツララの下がるこのトンネルを喘いで登ったものですが、トンネルを歩いたなどと表現するよりも、登ったと表現した方が適切です。
一部素掘り、未舗装と記しましたが、巻き立てやアスファルト舗装はそれなりに進められていた様で、この辺りの記憶は訪れた時期によって異なる様です。
現在は新しいトンネルが出来、旧釜トンネルは通行禁止になってしまいました。

素掘り、急勾配、曲りといった特徴を持つトンネルは、自動車用や鉄道用ではあまり見ることがありませんが、歩行者用のものは、全国の峡谷や断崖沿いに数多く残っていると思います。
管理人も佐渡・尖閣湾の断崖につけられた船着き場に降りる歩道や、峡谷の吊り橋に至る歩道にくり抜かれた素掘りトンネル(取材記1) の記憶があります。
ここでは、そんなイメージのトンネルを掘ります。

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 地山は陶芸用粘土(細目)を使いました。
 
 曲り坑道にする為、不等辺角柱にしてあります。
A

 岩っぽい感じを出す為、各面を彫刻してみました。
 
 正面は険悪逆層、谷川岳一の倉沢衝立岩の感じです。


 
 
B

 低い方の坑口(以後、低坑口)を青エンピツでトレースしたところです。
 床端までの高さは25mmです。

 画像にマウスオンで 高い方の坑口(以後、高坑口)です。
 床端までの高さは55mmです。
C
 
 真上からの画像です。
 左が高坑口で、センターまで直線で65mm、 右が低坑口で、センターまで直線で60mmです。
 床高低差は30mmですから、ラフな計算で、
     掘削距離≒128.6mm
     平均斜度≒13.5度
     平均勾配≒1000分の233
 となります。
E <1日目/延時間0.0時間> >低坑口 ←カメラ目線

 掘削を始めます。
 
F >低坑口

 低坑口のドリル入れです。
 ズリ(堀り屑)は下のバケツに落とせる様にしてあります。
G >低坑口(画像にマウスオンで>高坑口)

 本坑よりもひとまわり小さい径で先進導抗を掘り進めます。


I <2日目/延2.5時間> >低坑口(画像にマウスオンで>高坑口)

 低坑口から水平距離で45mm堀進しました。
 高坑口から水平距離で35mm堀り進みました。
K <3日目/延5.5時間> >低坑口

 低坑口からの掘進距離はラフな計算で47.4mm。
 斜度は18.4度でした。
 予定よりも勾配が強いので修正することにします。
 修正量は切羽面で約4mm下げる計算です。

 オリジナル画像は見難かったので 
pixia を用いて補正してあります。
 
L >高坑口

 高坑口からの掘進距離もザックリ計算で35.4mm。
 斜度は−8.1度で、勾配が不足していました。
 修正量は切羽面で約3mm下げの計算です。

 両坑口からの合計掘進距離は82.8mmでしたので、約64.4%完了したことになります。
 
  M <4日目/延7.0時間> >低坑口


 低坑口修正中。
N >低坑口

 低坑口修正完了。
 勾配は1000分の247になりました。
O >高坑口

 同様に高坑口も修正し、勾配は1000分の−237になりました。
  P <5日目/延9.5時間> >低坑口

 低坑口から60mmの掘り進みましたので、こちら側からの掘削を一時休止し、高坑口側を掘る事にします。
 
ザックリの計算で残り30mmです。 
  Q <6日目/延12.5時間> >高坑口

 高坑口からの掘削を再開して約3時間、高坑口から62mm堀り進み、抗芯残3mmになったところで、右側が部分貫通しました。

R >低坑口

 部分貫通を低坑口から観た様子です。
 坑口面とほぼ平行に掘り進んだ結果、半径の小さい側が先に貫通した格好です。
 半径の大きい反対側は貫通まであと3〜5mm残っています。

 ここで直ぐに貫通口を拡げることはせず、この穴を見当にして、低坑口側のカーブを修正することにします。
S >低坑口

 左カーブを修正しました。
 Qとの位置関係が良くなっています。
21 >高坑口
 
 低坑口側のカーブ修正を終え、高坑口から堀進めます。
  22 >高坑口

 トンネル堀り遊びで、最も楽しい一時です。
  23 >高坑口
 
 側端、天端を揃えます。 
24 >高坑口

 先進抗は無事開通しました。
 接合面の床面がやや膨らんでいますが、本抗拡張時に修正することにします。
25  >低坑口

 低坑口からの先進抗開通の様子です。
  26 <7日目/延17.0時間>  >高坑口

 本坑の拡幅工事を開始します。
  27  >低坑口

 低坑口からも拡幅工事を開始します。
28  <8日目/延20.0時間> >低坑口

 先進抗の歪を補正しながら掘り進めています。
 この辺りから、右側壁が先進抗と重なります。
  29 >高坑口 

 拡げます。
30  <9日目/延25.5時間> >高坑口

 拡げます。
31 >低坑口

 どんどん進めます。 
 先進抗が開いているので楽な作業です。
 
32  <10日目/延29.0時間> >高坑口

 残り約5mmになりました。

 
  33 >高坑口

 左半分はきれいに接続しました。
34 >高坑口

 右半分を一気に削り取ります。
35 >低坑口

 低坑口からの接続状況です。
 低坑口側の床面バンクがやや強めでした。
 
36 >低坑口、高坑口

 修正して完了です。
 

 ルールAの検査は左の3箇所で合格でした。
 
  

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